【曇時々晴】<揺れるな俺のココロ!>
鈴置洋孝さんがお亡くなりになられました。
肺ガンだったそうです。
僕が演出をさせてもらった作品が遺作になってしまったという話も聞きました。
最後の作品……
偉大な先輩に、そして尊敬し、もちろん大ファンである大大大先輩に対して、
胸を張って「良い仕事だったでしょ?」と言える作品になっていただろうか?
テイストとか内容ではなく、自分がその仕事に臨む姿勢に覚悟があっただろうか?
本当に遺作かどうかは確認しようもないが、事の真偽は実は無関係のような気がしている。
師匠が兄貴と慕い、酒が飲めない師匠に酒を教えてくれた鈴置さん。
現場で、若造演出家の俺が緊張気味に迎え入れると、笑顔で現場を和ませてくれた大らかな
人でした。
「最近の若いスタッフはみんなガンダム好きな世代だからな!
しょぉがねぇなぁ、この役全部ブライトでやってやるよ!」
なんてスタッフの僕たちまで楽しませてくれる余裕がありました。
入院を控える身でありながら、その強さ、優しさが今になって身に染みます。
僕はたった一つの作品でしかご一緒できなかったけど、そのたった一つが最後の一つになって
しまった事に少なからず衝撃を受けています。
あの人に誇れるような仕事だっただろうか。
胸を張って前を向けるような仕事だっただろうか。
寂しそうに酒を煽り、無理矢理はしゃぐ師匠の背中を見ながら、今日だけは酔ってしまいたい
と強く思った。
シラフの自分が、禁酒中の身が恨めしかった。
一人になると色々考えてしまいそうで、結局師匠がフラフラになるまで付き合いタクシーで帰
宅した。
甘ったれで、ヨレヨレの自分の姿が恥ずかしかった。
前を向ける立派な大人に僕はなりたい。
ご冥福を心からお祈りいたします。